水の山プロジェクトの一環として、一昨年から北杜市各所で発売された、天然水のかき氷。近年、単なる夏の風物詩として以上に、スイーツのような進化を遂げるかき氷が増える一方で、天然水のかき氷はいたってシンプル。「おいしい水を食べてもらう」。
この考え方でつくられるかき氷の味、食感、シロップは?提供場所のひとつ、尾白の森の中にある名水公園「べるが」へ。
夏になるとさまざまな涼を求めて海や山へと向かう私たち。名水地に対しては、こう期待してしまうのは日本人の証だろうか。
「おいしい水でつくったかき氷は、きっとおいしいに違いない」
この欲求を受け止めてくれるかのように、北杜市には天然水のかき氷を食べられる場所がいくつか存在する。「白州・尾白の森名水公園べるが」内にあるサラダボウルキッチンもそのひとつだ。地元の野菜を使った料理が人気のこの店では、夏の間の限定メニューとして南アルプスの天然水を使ったかき氷を一昨年から提供している。
「『おいしい水をいただく』というのがコンセプトです」と話すのはスタッフの江間篤さん。
近年、ふわふわな食感を実現するために硬い氷をいかに薄く削るのかがかき氷のトレンドなのだそうだが、「ここの水は柔らかいので、とても削りやすく、ふわふわ。なので、なるべくそのまま食べてもらいたいと思っています」と江間さんが見せてくれたのは氷の塊。

うっすらと白濁している部分はミネラルで、まろやかな口当たりを感じるのはこの成分をたっぷり含んでいるからだと言う。そして最も大切にしているのは氷の状態。一度、冷蔵庫に入れなおしたりして、溶け出した頃を見計らって削ることで、よりふわふわの食感を引き出すことができるのだとか。
一昨年から始まったこの天然水かき氷は、かき氷ブームのきっかけをつくった神奈川県・鵠沼海岸にある「埜庵」の店主・石附浩太郎氏に教えを請うところから始まった。「かき氷を売るんじゃない。おいしい水を食べてもらうんだよ」。
禅問答のようにも聞こえる石附氏の考えに触れ、水の山プロジェクトの理解を深められた気がすると江間さんは言う。「おいしいかき氷を売りたいのではなく、おいしい水がある風景を伝えたいわけですからね」

水を食べると言いつつも、やはり気になるのはシロップ。いちごミルクと高原ミルクの2種類があり、いずれも北杜市の農家などから仕入れた素材を使用している。いちごのほうを一口食べてみると、それはシロップというよりジャムと言いたいほどの濃厚さ。削ってはシロップをかけ、丁寧に三層構造で氷の山は作られており、どこから食べても甘酸っぱい果汁と濃厚なミルクが溶け合った絶妙な味を堪能できる。
高原ミルクも負けていない。口に入れた途端、こっくりとした甘みが口の中にひんやりと広がり、さすが八ヶ岳高原産と唸りたくなるかき氷だ。これを食べた石附氏も思わず「欲しい」と言ったほどの上質なミルクである。
そんな高い評判を得ているかき氷をさぞや誇らしく思っているだろうと尋ねると、意外にも江間さんは「おいしい水があればそれでいいじゃん、とも思うんですけどね」と微笑む。余裕にも感じられるその笑顔の背景には、どうやらこの公園のポリシーが関係しているようだ。レストランの外には池があり、そこではニジマスが気持ちよさそうに泳いでいて、夏はここでつかみ取りも体験可能。
「ニジマスを売りたいわけじゃないんです。水を感じてもらいたいんです」と江間さん。心臓をぴゅっと取り出して、『ほら動いてるでしょ』って子供に見せたりして、命を食べるということも教えるそうだ。時にはレストランの外で流しそうめんもやるとのこと。それに森を抜ければ水遊びができる美しい川も広がっている。

「ここでは白州の水の良さを、レストランという形で伝えていこうという考えなんです」
江間さんにとって天然かき氷は、たまたま氷のかたちをした水ということ。さらに言えば、水は豊かな自然の中にあるひとつの恵みにしか過ぎないのだ。かき氷を目当てに押しかけた私たちの姿は彼の目にどう映っただろうか。夏を目前に迎える森は、いよいよ青々と茂っていた。

サラダボウルキッチン

住所:
山梨県北杜市白州町白須8056
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TEL:
0551-35-3153
定休日:
水曜日(祝日の場合は木曜日、GW・夏休み期間中は無休)
営業時間:
11:00〜17:00 17:00〜21:00(前日までの予約制)
URL:
http://www.verga.jp/?page_id=53
備考:
※期間限定メニューにつき、提供時期はWEBサイトをご参照ください。