もっちりとしたお餅に、濃密な黒蜜と優しい味わいのきな粉。甲斐の名将、武田信玄公に由来するという信玄餅は、県を代表する銘菓として愛されている。そんな信玄餅を始め、和菓子の老舗として知られるのが北杜市白州町にある金精軒だ。
甲斐駒ケ岳の伏流水で仕込まれた和菓子の数々は、名水の恩恵を感じられる上品で奥深い味わい。連日、地元客や観光客で賑わいをみせる、全国にその名を馳せる人気店だ。
甲州街道の台ヶ原宿。かつて宿駅として盛況をきわめた通りには、昔ながらの面影を残した家々が並ぶ。その一角にある、当時の旅籠屋であった建物が和菓子店の金精軒だ。創業は1902(明治35)年。
甲斐駒ヶ岳とその花崗岩の岩肌に磨かれた地下水で仕込まれ、防腐剤、人工甘味料を一切使わず造られる和菓子。この土地の水は素材のおいしさを引出してくれるありがたい恵みだ。

「白州町の水は南アルプスの伏流水。私たちはこの水を、主に小豆などの原材料を炊く時に使います。加熱すると水分は飛びますが、中にはミネラルなどの成分が残ります。素材の持つ味を損なわない水、というよりはむしろ引き立ててくれる水なのです」。
そう話すのは110年以上続く金精軒の4代目で代表取締役の小野光一さん。曰く、白州町内の水道水は基本的に地下水なので、蛇口をひねれば名水が出てくる。そんな恩恵をまるごと和菓子作りに生かしているのだとか。
この店のもっとも代表的な和菓子といえば信玄餅。「餅の成分は、餅米と水が1:1。半分が水だから水質次第で味に歴然と違いが現れます」。信玄餅以外にも白州の水を使った名水まんじゅうや水信玄餅など、水のおいしさを引き出した和菓子もまた人気を集めている。
なかでも6〜9月までの土、日にしか販売されない水信玄餅は、ぎりぎり形をとどめる程度の硬さにした水菓子で、水分量のパーセンテージはなんと95%以上。限定販売のため、売り始めてから午前中で売り切れてしまう。口コミで広がりはじめ、今では海外からの問い合わせもあるのだとか。

「この土地の水そのものをストレートに打ち出したのが水信玄餅。つついただけで破裂しそうなほど柔らかく、口の中に入れると消えるように水になってしまいます」
器から出して常温に晒すと30分程度で本来のおいしさが失われてしまうため、時間内に食べることが必須。ゆえに自社店舗のみの取り扱いで持ち帰りもできない商品。それがかえって注目を集めているのだ。
小野さんをはじめ、スタッフはみな「地元の名水を使った和菓子を通して、どうやってお客様に喜んでもらえるか」を常に考えているという。社内では新しいテイストに関する会議も活発で、水信玄餅以外にも斬新なメニューが生まれている。
例えば、極上生信玄餅は山梨県産梨北米100%のみを使用し、米の旨さを引き立てるために砂糖を従来の半分にした。商品名に「生」と付くだけに口当たりはさらに柔らかい。消費期限は3日間。限定店のみの販売だが、この妙味を味わってほしいと話す。さらに、店のはす向かいにある山梨銘醸株式会社の清酒「七賢」の大吟醸酒粕を活用し、カステラ状に焼き上げた大吟醸粕てらもまた地元の恵みを活かした、新しい味のチャレンジの賜物だ。

そんなスタッフの心意気とこだわり、一つ一つ手作業から生まれる丁寧な仕事が金精軒のおいしさを作り上げているといっても過言ではない。
「水や米、この土地ならではの自然のおいしさを味わってもらうために大量生産はできません。だからお客様の反応がダイレクトにわかる、それが私たちの新しい和菓子作りのモチベーションになっているんです」

金精軒

住所:
山梨県北杜市白州町台ヶ原2211
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TEL:
0551-35-2246
定休日:
木曜日
営業時間:
9:00〜18:00
URL:
http://kinseiken.co.jp/