高々とそびえる南アルプス連山の山麓、緑生い茂る森の中にその工場はある。サントリー「南アルプスの天然水」のふるさと、サントリー天然水 南アルプス白州工場だ。花崗岩層でゆっくりと磨かれ、長い歳月をかけてミネラルをたっぷり含んだ水は清冽でまろやか。
ただ、このおいしい天然水をつくり続けるためには、健やかな森を育む活動も欠かせないという。ふだん何気なく飲んでいるミネラルウォーターと森との関係とは?
世界の名だたるミネラルウォーターを思い浮かべる時、その水を育んだ荘厳な山々も同時に想起する人は多いのではないだろうか。
南アルプスもまた水に恵まれた名峰のひとつ。1991年に発売以来、たくさんの人に愛飲されてきた「サントリー 南アルプスの天然水」は、北杜市白州町、南アルプス連山のふもとにあるサントリー天然水 南アルプス白州工場でつくられている。
この山で汲まれる水はなぜおいしいのか。その理由を探るべく、豊かな緑が広がる森を分け入って工場を訪ねると、迎えてくれたのは同社エコ戦略部の鈴木健さん。通常、企業活動として「エコ」と聞くと、どことなくCSRと結びつけがちである。
果たして天然水を生み出す山のメカニズムについて聞き出せるものかと思いきや、鈴木さんは微笑みながらきっぱりと言った。
「いい水をつくるために最も大事なのは、森のふかふかの土なんです」

「天然水とは、地層のミネラルをたっぷり含んだ水のこと。サントリーが使いたいのはその地下水です。その量と質を保つために私たちエコ戦略部が行っているのが、山の調査と補修作業なんですよ」と鈴木さんは話す。
かつて日本には、木を多く植えた時代があった。日本家屋の建材として使いやすいスギやヒノキを植えた、1960年〜70年代の拡大造林期と呼ばれる時代である。そして今、それらが使われない時期が長く続いてしまっている。
「本来『自然』とは言えない木をたくさん植えると森は真っ暗になってしまいます。すると土を柔らかくしてくれる下草や微生物が育たない。土はカチンカチンになるんです」
そうした森に雨が降っても水は土壌に浸透せず、表面を流れて川へと向かってしまい、肝心の地下水は山に残らないことになる。

そうならないために鈴木さんは少なくとも月に1回は山に登る。間伐が必要な森はないか。山肌が崩れている場所はないか。新たに木を植えるとしたらどういう樹種であるべきか。
大学の研究者や森林コンサルタントと協働しながら徹底した調査を行い、ふかふかの土を育むための適切な作業を見極めるのだ。
工場の敷地内を歩いていると、あちこちに美しいアカマツが群生していることに気づく。「元々ここは山の上から堆積物が流れこんでできた土地。アカマツはパイオニアツリーなんです」。
森はつねに一定の状態ではなく、移り変わっていくものだという。貧栄養の土地でも育つのがアカマツのような植物で、それが葉を落とし、分解を繰り返すことで土地は肥沃になっていく。するとアカマツは役目を終え、後継樹としてコナラやカエデのような広葉樹林が生えてくる。また、場内にはアカマツを残したいエリアもあり、そういったところでは移り変わりを遅らせるように手を加えている。
山の中で鈴木さんが行う樹種の見極めはこうした考えのもとで行われているのだ。
この日、山に生息している稀少な野鳥を見ることはできなかったが、威勢のいい森の住人には何度か出くわした。
ミミズである。都会に住んでいると、アスファルトの上でぐったり伸びた姿をよく見かけるが、ここのミミズはしっかりと肥え、活きが違う。
「これが土を食べて、糞を微生物が分解して。それが繰り返されると、ふかふかの土になっていくんです」と鈴木さん。
植物は水と栄養があれば良いかというと、そうではなく、微生物や菌根菌らとの共生が欠かせない。多様な微生物がいれば、多様な植物が育まれ、それらをついばむ生き物も多様になり、大きく安定した生態系ピラミッドができあがる。よって、その頂点に君臨するタカやワシといった猛禽類が住み着いていると、そこは健全な森と言えるのだそうだ。

木を見て、森を見て、水を見る。エコ戦略部の活動は、まさに水と生きるサントリーの基幹事業であった。「早く、ほうっておける状態にしたいんです」と鈴木さんは語る。
森を眺めるそのやさしい目は、慈しみがこもっているのと同時に、まだまだ解決すべく課題と向き合っていく使命感を帯びているようにも見えた。

サントリー天然水 南アルプス白州工場

住所:
山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
GoogleMapsで見る
TEL:
0551-35-2211
定休日:
年末年始・工場休業日(臨時休業あり)
営業時間:
9:30〜16:30(最終入場 16:00)
URL:
http://www.suntory.co.jp/factory/water/